
トライアスロンに挑戦しようと思うんだけど、ランのトレーニングってなにをやればいいの?
この記事では、そんな疑問を解決します。
本記事の内容
- ランの重要性
- 適切な練習ペース
- 具体的なトレーニングメニュー
自己紹介

僕は、トライアスロンを初めて2年目で日本代表に選出されました。
ランは嫌いだったので、デビューしてからしばらくはラントレーニングをやっていませんでした。
大会本番は、バイクまではいい順位でも、ランで多くの人に抜かされてしまっていました。
初シーズンを終えたころ、ラントレーニングをイチから勉強し直しました。
正しい知識を付けて、地道なトレーニングを続けるうちに、ランのレベルは向上しました。
結果的に、年代別入賞ができて、日本代表に選出されました。
そんな経験と知識をまとめて、みなさんのためになる情報をお届けします!
ランの重要性
僕はトライアスロンではランパートが最も重要だと考えています。
その理由を3つ紹介します。
「ラン順位」と「総合順位」の関係
「ランの順位が総合順位を決める」と言われています。
実際、僕のライバルの選手たちも、上位を勝ち取る選手はランでも速い選手ばかり。
試しに、「2019年蒲郡オレンジトライアスロン」のリザルトから、こんなデータを取ってみました。

このグラフは、横軸が「総合順位」、縦軸に「総合順位と種目別順位との差」をまとめたものです。
これを見ると、3種目のうち、ラン(オレンジ色)が最もばらつきが少ないことがわかります。
つまり、『ランの実力は、トライアスロン実力に最も近い』ということがデータから分かります。
クロストレーニング
クロストレーニングとは、複数の競技のトレーニングをすることにより、単独競技のトレーニングでは得られない効果が期待でき、結果的に効率的なトレーニングができるという考え方です。
ランでよく行う『LSD』では、心肺機能や、上半身の体幹、背中の筋力などが鍛えられます。
これらはスイムやバイクにも応用できるし、短時間でお金もかけずにできるトレーニングです。
つまり、クロストレーニングという意味でも、ランは効率のいい競技だと思います。
LSD (Long Slow Distance)
歩かないギリギリのペースで長時間走り続けるトレーニングメニュー。
シャッターチャンス
トライアスロンの一番のシャッターチャンスはやはりゴールテープを切る瞬間です。
トライアスロンは「完走した全員が勝者」という考えから、全員分のゴールテープが用意されます。
せっかくの感動的なゴールを、悶絶した顔で写真に収められるのは、誰でも嫌だと思います。
つまり、さわやかなゴール写真にするために、ランは重要です。
練習ペース
適切な練習ペースを知っておくことは、ラントレーニングにおいては重要です。
適当な練習でも初期は記録が伸びますが、そのうち、伸び悩んだり怪我の原因になったりします。
実際に僕も、ランの練習を始めた頃は、オーバーワークによってよく怪我をしていました。
継続的にランの実力を向上させるには、実力に合わせた設定ペースを知る必要があります。
VDOT
VDOTは「ダニエルズのランニングフォーミュラ」で紹介されている用語です。
(この本もめちゃめちゃ参考になるので、少しむずかしい内容ですが、ぜひ一度読んでみてください。)
正式には「V dot O2max」という名称で、「1分間のVO2max(最大酸素摂取量)」のことを言います。
細かい説明は割愛しますが、そこで推奨されている目安となるペースが次の表です。
VDOT | 5km | 10km | ハーフ | フル | Eペース | Mペース | Tペース | Iペース | Rペース |
30 | 30’40 | 63’46 | 2’21’04 | 4’49’17 | 7’27-8’14 | 6’51 | 6’24 | – | 2’16 |
31 | 29’51 | 62’03 | 2’17’21 | 4’41’57 | 7’16-8’02 | 6’41 | 614′ | – | 2’12 |
32 | 29’05 | 60’26 | 2’13’49 | 4’34’59 | 7’05-7’52 | 6’31 | 6’05 | – | 2’08 |
33 | 28’21 | 58’54 | 2’10’27 | 4’28’22 | 6’55-7’41 | 6’21 | 5’56 | – | 2’05 |
34 | 27’39 | 57’26 | 2’07’16 | 4’22’03 | 6’45-7’31 | 6’13 | 5’48 | – | 2’02 |
35 | 27’00 | 56’03 | 2’04’13 | 4’16’03 | 6’36-7’21 | 6’04 | 5’40 | – | 1’59 |
36 | 26’22 | 54’44 | 2’01’19 | 4’10’19 | 6’27-7’11 | 5’56 | 5’33 | 5’07 | 1’55 |
37 | 25’46 | 53’29 | 1’58’34 | 4’04’50 | 6’19-7’02 | 5’48 | 5’25 | 5’00 | 1’53 |
38 | 25’12 | 52’17 | 1’55’55 | 3’59’35 | 6’11-6’54 | 5’41 | 5’19 | 4’54 | 1’50 |
39 | 24’39 | 51’09 | 1’53’24 | 3’54’34 | 6’03-6’46 | 5’33 | 5’12 | 4’48 | 1’48 |
40 | 24’08 | 50’03 | 1’50’59 | 3’49’45 | 5’56-6’38 | 5’27 | 5’06 | 4’42 | 1’46 |
41 | 23’38 | 49’01 | 1’48’40 | 3’45’09 | 5’49-6’31 | 5’20 | 5’00 | 4’36 | 1’44 |
42 | 23’09 | 48’01 | 1’46’27 | 3’40’43 | 5’42-6’23 | 5’14 | 4’54 | 4’31 | 1’42 |
43 | 22’41 | 47’04 | 1’44’20 | 3’36’28 | 5’35-6’16 | 5’08 | 4’49 | 4’26 | 1’40 |
44 | 22’15 | 46’09 | 1’42’17 | 3’32’23 | 5’29-6’10 | 5’02 | 4’43 | 4’21 | 98 |
45 | 21’50 | 45’16 | 1’40’20 | 3’28’26 | 5’23-6’03 | 4’56 | 4’38 | 4’16 | 96 |
46 | 21’25 | 44’25 | 1’38’27 | 3’24’39 | 5’17-5’57 | 4’51 | 4’33 | 4’12 | 94 |
47 | 21’02 | 43’36 | 1’36’38 | 3’21’00 | 5’12-5’51 | 4’46 | 4’29 | 4’07 | 92 |
48 | 20’39 | 42’50 | 1’34’53 | 3’17’29 | 5’07-5’45 | 4’41 | 4’24 | 4’03 | 90 |
49 | 20’18 | 42’04 | 1’33’12 | 3’14’06 | 5’01-5’40 | 4’36 | 4’20 | 3’59 | 89 |
0 | 19’57 | 41’21 | 1’31’35 | 3’10’49 | 4’56-5’34 | 4’31 | 4’15 | 3’55 | 87 |
51 | 19’36 | 40’39 | 1’30’02 | 3’07’39 | 4’52-5’29 | 4’27 | 4’11 | 3’51 | 86 |
52 | 19’17 | 39’59 | 1’28’31 | 3’04’36 | 4’47-5’24 | 4’22 | 4’07 | 3’48 | 85 |
53 | 18’58 | 39’20 | 1’27’04 | 3’01’39 | 4’43-5’19 | 4’18 | 4’04 | 3’44 | 84 |
54 | 18’40 | 38’42 | 1’25’40 | 2’58’47 | 4’38-5’14 | 4’14 | 4’00 | 3’41 | 82 |
55 | 18’22 | 38’06 | 1’24’18 | 2’56’01 | 4’34-5’10 | 4’10 | 3’56 | 3’37 | 81 |
56 | 18’05 | 37’31 | 1’23’00 | 2’53’20 | 4’30-5’05 | 4’06 | 3’53 | 3’34 | 80 |
57 | 17’49 | 36’57 | 1’21’43 | 2’50’45 | 4’26-5’01 | 4’03 | 3’50 | 3’31 | 79 |
58 | 17’33 | 36’24 | 1’20’30 | 2’48’14 | 4’22-4’57 | 3’59 | 3’45 | 3’28 | 77 |
59 | 17’17 | 35’52 | 1’19’18 | 2’45’47 | 4’19-4’53 | 3’55 | 3’43 | 3’25 | 76 |
60 | 17’03 | 35’22 | 1’18’09 | 2’43’25 | 4’15-4’49 | 3’52 | 3’40 | 3’23 | 75 |
61 | 16’48 | 34’52 | 1’17’02 | 2’41’08 | 4’11-4’45 | 3’49 | 3’37 | 3’20 | 74 |
62 | 16’34 | 34’23 | 1’15’57 | 2’38’54 | 4’08-4’41 | 3’46 | 3’34 | 3’17 | 73 |
63 | 16’20 | 33’55 | 1’14’54 | 2’36’44 | 4’05-4’38 | 3’43 | 3’32 | 3’15 | 72 |
64 | 16’07 | 33’28 | 1’13’53 | 2’34’38 | 4’02-4’34 | 3’40 | 3’29 | 3’12 | 71 |
65 | 15’54 | 33’01 | 1’12’53 | 2’32’35 | 3’59-4’31 | 3’37 | 3’26 | 3’10 | 70 |
66 | 15’42 | 32’35 | 1’11’56 | 2’30’36 | 3’56-4’28 | 3’34 | 3’24 | 3’08 | 69 |
67 | 15’29 | 32’11 | 1’11’00 | 2’28’40 | 3’53-4’24 | 3’31 | 3’21 | 3’05 | 68 |
68 | 15’18 | 31’46 | 1’10’05 | 2’26’47 | 3’50-4’21 | 3’28 | 3’19 | 3’03 | 67 |
69 | 15’06 | 31’23 | 1’09’12 | 2’24’57 | 3’47-4’18 | 3’26 | 3’16 | 3’01 | 66 |
5km~ハーフマラソンの自己ベストから、VDOTがどれくらいなのかを把握しておきましょう。
例えば、10kmを37:30で走る場合は【VDOT=56】となります。
Eペース(イージーペース)
- 目的:ケガの耐性をつくり、心肺機能を向上させ、血液の酸素運搬機能を改善すること
- 強度:「会話が可能なペース」
- 用途:アップやダウン、長い距離(30kmなど)の練習
- 心拍数:最大心拍数の65-78%
最大心拍数とは
最大心拍数の目安は「220 – 年齢」です(諸説あり) 。
例えば、30歳なら最大心拍数が190、Eペースでは「124 – 148」となります。
Mペース(マラソンペース)
- 目的:レース本番のペースに慣れること(=メンタルトレーニング)
- 強度:「会話するのは辛いが、やろうと思えば長い距離走り続けられるペース」
- 用途:25km以下のペース走
- 心拍数:最大心拍数の80-89%
Tペース(スレッショルド(しきい値)ペース)
- 目的:乳酸除去の機能向上(=持久力向上)
- 強度:「はやく終わって欲しくなるペース」
- 用途:20-30分程度の速いペース走
- 心拍数:最大心拍数の88-92%
Iペース(インターバル)ペース
- 目的:VO2max(最大酸素摂取量)を向上させる
- 強度:「手足がもげる一歩手前のペース」
- 用途:2分以上の短いメニュー(4-5分)で、本数を増やす時
- 心拍数:最大心拍数の97.5-100%
Rペース(レペティション)ペース
- 目的:無酸素作業能の向上
- 強度:かろうじて理性とフォームがを保てるペース
- 用途:400m程度の短距離、走った時間の2-4倍以上休息を挟む
- 心拍数:最大心拍数前後
トレーニングメニュー

ここからは、具体的な練習メニューを紹介します。
※練習例は「10km自己ベスト37:30 (トライアスロン年代別入賞目安)」の選手を参考にしています。
LSD(強度★・・・・)
心肺機能の向上や、フォーム改善に効果的なメニューです。
60分以上走るため、早朝やナイトランがおすすめです。
ペースは、Eペースよりもややゆっくり。
練習例:LSD 90分 (5:00/km)
ペース走(強度★★・・・)
レース後半でペースが落ちないような、メンタルトレーニングとして効果的なメニューです。
60分程度同じペース(Mペース)を維持しましょう。
週3日程度に抑えましょう。
練習例:ペース走 15km×1 (4:10/km)
LT走[インターバル走](強度★★★・・)
疲れにくい体を作るために効果的なメニューです。
20-30分間一定のペース(Tペース)を維持しましょう。
週2日程度に抑えましょう。
練習例:LT走 5km×4 (3:50/km) レスト10分
レペティション(強度★★★★★)
心肺機能の向上や、スピードアップのために効果的なメニューです。
3000m以内の短い距離を全力に近いペース(Rペース)で走りましょう。
体にダメージの大きい練習なので、週1日程度に抑え、翌日はしっかりと休息またはアクティブレストを入れましょう。
練習例:レペティション 1.5km×4 (3:30/km) レスト15分
アクティブレスト(強度・・・・・)
疲労した体を休めるためのメニューです。
歩いたりストレッチをするなどして、走らない日を作りましょう。
ゴロゴロするよりも、軽く体を動かしていたほうが、血液の流れがよくなり、早く回復します。
週に1日はアクティブレストの日を設定し、トータルのトレーニングの質を高めましょう。
練習例:ストレッチ、ウォーキングなど合計60分
まとめ
練習の目的や、目安のペースを意識しながら、効率よくトレーニングを計画・実施しましょう。
また、他の種目とのバランスは別の記事にまとめているので、そちらを参考にしてください。
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