スイミングスクールに通っていた人や、水泳部で大会に出場している人ですら「正しいけのび」ができていない人は多いです。
そんな人を市民プールなどで見るたびに
ああ・・・なんてもったいないことを・・・
「けのびの姿勢」を直すだけで一瞬でタイム縮めれるのに・・・
とさえ思ってしまいます。そこで、この記事では
- けのびで10m進めない人
- 「ストリームライン」という言葉を聞いたことがない人
- 「水中を滑る」感覚を味わったことがない人
- ゆっくり泳いでいるのに、50mで息切れしてしまう人
などに向けて、けのびの重要性とコツを紹介します。
今けのびが正しくできていない人は、「25mのタイムが2,3秒速くなる」はずなので、ぜひ最後まで読んで実践してみてください。
けのびの重要性
けのびが正しくできることで、様々なメリットがあります。
重要性①:圧倒的に速くなる
水泳は必ず「飛び込み」または「ターン」をきっかけに泳ぎだします。(トライスロンは例外ですが)
ここで質問です!25mプールを泳ぐトップスイマーが最も速い瞬間はいつでしょう?
- スタート直後
- 5〜10m
- ターンorゴール直前
正解は・・・「1.スタート直後(けのび)」です!
実は、水泳は「スタートの瞬間から、徐々にスピードが落ちていく競技」なんです。つまり、速くなるためには3つの条件があります。
- スタートorターン直後の速度が速い
- スタート後も減速しにくい
- レース後半まで一定の速度を維持できる
この中で、「2. スタート後も減速しにくい」ということをもう少し詳しく解説します。
この図は 100mを泳ぐ場合に「けのびの上手い人」と「けのびの下手な人」でスピードを比較したものです。
けのびの上手い人は、スタートやターン後の速度が落ちにくいため、ターンorフィニッシュまでのスピードが全体的に速くなります。
けのびの下手な人は、スタートやターン後から速度が落ちてしまい、ターンやフィニッシュまでのスピードが遅くなります。
じゃあ、早めに浮上して泳ぎ出せばいいんじゃないの?
という意見もあるかとおもいますが、これは逆効果です。図で解説します。
けのびを早めに切り上げて浮上した場合、たしかに早く泳ぎだすことはできますが、実際には「体力の消耗」の影響が大きく、腕や脚に乳酸がたまり、特に後半になるとスピードが出なくなります。
こういった理由から、けのびを上手にできると圧倒的に速く泳げることがわかります。
重要性②:水泳の上達スピードがアップする
「オリンピック選手の速さは次元が違う」と思っている人は多いと思います。
しかし、正しいけのびができている人にとっては、『【スタート直後5mのタイム】×10』なら『水の怪物・マイケル・フェルプスの50m自由形』よりも速いはずです。(それでも僅差かもしれませんが、、、笑)
先程も説明したように、水泳は「初速が最高速度」なので、『けのびをしている瞬間だけは、トップ選手の途中の泳ぎよりも速く進んでいる』ということになります。
この感覚は非常に重要で、「実力以上の速度感覚」が分かっていないと、「速く泳ぐイメージ」はつきにくいんです。逆に、速く泳ぐイメージがついていれば、フォームチェックのために泳いだときに、「ここは抵抗が大きすぎるな」や「キックが弱いな」などの『自己チェック』がうまくなります。この感覚により、本質的な改善が常にでき、上達スピードが上がって、早く速く泳げるようになります。
しかし、けのびがうまくできていなければ、そもそも「速く泳ぐイメージ」ができていないので、フォームチェックをしても、本質的な間違いには気づけません。したがって、上達スピードも遅くなってしまいます。
「けのび」の間違った指導方法
僕が指導していたときにもそうでしたが、そもそも「けのびが分かっていないコーチ」は結構多いです。原因は、合格基準が甘かったり、フォームが悪くてもタイムがよければ合格になってしまったり。
そこで、けのびに関する「間違った指導」について紹介します
間違った指導方法①:「おへそを見て」
けのび姿勢でおへそを見ることは不可能ですが、要するに「目線を下げることで頭を沈めて」ということを言いたいのだと思います。しかし、これでは誤解されることが多く、「背中が丸くなる」クセにもつながってしまいます。
背中を丸めてしまうと、失速してしまいますし、あまりにひどいと顔を上げるときに姿勢がぐちゃぐちゃになってしまいます。正しくは、『背中を伸ばすor反る』です。
間違った指導方法②:「手を前に出して」
バタ足を教える前にけのびを習得させるようなクラスでは、「立った状態からジャンプしてけのびで平行移動する」といった練習メニューが組まれていたりします。この場合に「手を前に出して」という声掛け(指導方法)をされることがあります。ある意味まちがっていませんが、指導者と生徒の勘違いによって間違った指導になってしまいます。
立った状態では、進行方向が『前』になりますから、手は『前』が正しいです。しかし、「壁を蹴ってスタートする」場合には、話が変わってきます。壁を床と考えると、進行方向は『上』になります。たしかに、正面から指導しているコーチなどからすると『正面=前』なのですが、泳いでいる人にとっては『壁から見た上』になります。
これを勘違いしたままでいると、「後頭部が腕の中に入っていない」&「腕が曲がっている」けのびになります。
このままでは、壁を蹴った瞬間に顔で水の抵抗をもろに受けて減速するだけでなく、その後の泳ぎも顔が正面を向いてしまったり、入水時に腕が曲がったままになるクセがついてしまいます。絶対にやめましょう。
けのびの正しい姿勢「ストリームライン」とは
いきなりですが、「ストリームライン」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
ストリームラインは、けのびの姿勢のことであり、水の抵抗を最も少なくなるための姿勢です。
聞いたことがない ≒ 正しいけのびを知らない
= 正しい蹴伸びができていない
= まだまだ伸び代がいっぱい!
ということなので、最後までしっかり読んでレベルアップしてくださいね。
ストリームラインがしっかりできている状態で壁を蹴ると、まるで体が水の中を滑っているような感覚になります。
「ストリームライン」のコツ
ストリームラインの正しい姿勢を図にするとこんな感じです。細かく説明していきます。
1. 肘を伸ばす
両手を重ねて、頭の後ろで腕を限界までピーンと伸ばした状態になります。肩の柔軟性も必要になるので、練習前後によくストレッチしておくといいと思います。「腕に力がぐっと入って壁を蹴ってもブレない」くらいのビシッとした姿勢を意識しましょう。
このポイントは、コーチが教えてくれないことがあります。
「腕の力を抜いて」なんて教えるところもあるようですが、よっぽどの体幹がない限りは「全力で」力を入れて腕をロックしてもいいくらいです。
2. アゴを引きすぎない
腕の中に頭を入れますが、アゴを引きすぎて下を向いてしまわないように注意しましょう。下を向いてしまうと、腕が下がってしまい、体が弧を描いてしまうためロスが大きくなります。
このポイントも、コーチが教えてくれないポイントです。
それどころか、「肘で耳を抑える(顔の横に肘がある状態)」と教えることも多いみたいです。
市民プールで頭が腕から出ているけのびをみるたびに、「もったいないなあ」と思います。
3. 背中を反る
胸を張ってお腹を凹ませることを意識して、背中を反ります。背中が曲がっていると、姿勢が弓なりになってロスが大きくなります。
4. 脚を閉じる
脚はスタートorターン直後に閉じます。脚が開いていると、ブレーキになってしまうので気をつけましょう。
5. 【ドルフィンキック】小刻みにキックを打つ
このポイントは、4泳法全てに共通する「ドルフィンキック」のポイントです。
動画は「水の怪物・マイケルフェルプス」の動画です。動画内でも語られていますが、ドルフィンキックを小刻みに打つことで、上半身のブレを減らし、ロスを減らすことが重要です。
けのびの練習に効果的な「ショートフィン」とは?
いざ、けのびの練習をしようとしても、どのような練習を取り入れたらいいかわかりませんよね?壁を蹴れば練習になるのなら、スタートやターンを集中的に練習すればいいように思いますが、効率の悪い練習を繰り返しても上達しないばかりか、体力を消耗して別の練習がこなせなくなってしまいます。ここからは、けのびの練習に効果的な「ショートフィン」を使った練習方法について解説します。
「ショートフィン」とは?
ショートフィンの「フィン」とは、足につけるトレーニング器具で「足ヒレ」とも呼ばれるものです。フィンの中でも、長さが短いものをショートフィンと呼びます。
フィンは長さに比例して推進力が大きくなりますが、大きすぎると姿勢やキックの刻みが実際のフォームとは変わってしまうため、適切な長さのものを選びましょう。
ショートフィンを使うメリット
ショートフィンを使うことで、普段意識しないようなポイントがわかったり、より効率よくフォームの改善ができます。具体的には、以下のメリットがあります。
メリット1:推進力が得られる
けのびが上手くなるには「速いスピードに慣れる」ことが最も重要です。フィンをつけることで、推進力が得られ、簡単に世界トップ選手並みのスピードで泳ぐことができます。速いスピードでけのびの姿勢を作ることで、良い姿勢か悪い姿勢かをセルフチェックしやすくなります。
メリット2:タイミングが感覚で掴みやすい
けのびにおいては、「タイミング」が重要になります。自分に合った最も効率のいいタイミングを探ることでけのびが改善され、短期間でのタイム短縮が実現できます。ここでいうタイミングとは、以下の3点です。
- キックを打ち出す時間
- キックを打つ間隔
- 浮上する距離
フィンをつけることで、これらのタイミングのズレによって大きな水の抵抗を感じることになります。フィンをつけていない時よりもシビアにこれらのズレが分かるようになるため、フィンをつけることでタイミングを自然とコントロールするようになります。
メリット3:練習が楽しい!(超重要)
水泳の練習って、行ったり来たりの繰り返しなので、正直飽きてしまうことがあります。というか、練習始める前にうんざりしている日もあるくらいです。。。
フィンの練習は、あまりやっている人も多くないので、珍しい練習メニューだと思います。しかも、スピード感はあるのに上半身は脱力しているので疲労感はそこまでなく、リフレッシュ効果もあります。
気分は「大海原をジャンプするイルカ」!
楽しい!!ヒャッホーウ!!
スピードメニューやスタミナを養うメニューばかりに飽きてしまったら、フォームの改善かつリフレッシュにもなるフィントレーニングを取り入れるのがおすすめです。
ショートフィンを使った練習方法
具体的に、ショートフィンを使った練習方法は下記の通りです。
練習方法1:アンダーウォーター(25m)
その名の通り、25m潜水する練習方法です。呼吸が少なくなるので体力の消耗が激しいですが、より長い距離で推進力を維持するトレーニングになるので、「ドルフィンキックを改善したい」場合に最もおすすめです。具体的には、下記のポイントが改善できます。
- キックのタイミング
- 正しいストリームライン
練習方法2:ハーフアップ(12.5m+12.5m)
25mプールなら、12.5mを潜水して残り12.5mは浮上してコンビで泳ぐ練習方法です。この方法では、「浮上を改善したい」場合に最もおすすめです。ハーフラインで浮上することで、浮上のタイミングで失速しにくくなります。具体的には、下記のポイントを改善できます。
- 浮上のタイミング
- 浮上時の姿勢(顔、腕)
練習方法3:コンビ(50m)
上半身も合わせて、フィンありで普通に泳ぐ練習です。「ターンのタイミング」や「上半身との組み合わせ」を意識するために重要な練習方法です。フィンをつけることで推進力が大きくなるので、世界トップ選手のスピード感で上半身のフォームを改善することができます。具体的には、下記のポイントが改善できます。
- ターンのタイミング
- 上半身のブレ
- 呼吸時のキック
ショートフィンを使う場合の注意点
ショートフィンはメリットがあって楽しいトレーニングですが、以下の注意点があります。
注意点1:サイズが合っていないとケガする
ショートフィンは、足に装着する器具なので、脂肪や筋肉が薄く、骨にストレスのかかりやすい部位になります。フィンの素材やサイズによっては干渉がひどく、擦れることがあります。ただし、店頭などでサイズ確認しても、実際の練習では水の中でトレーニング中の足の形になっているので正しくサイズが分かりにくいため、かなりサイズ選びには苦労します。そこで、「干渉しても足が痛くない素材」を使ったフィンがおすすめです。
注意点2:プールによっては禁止されている所がある
市民プールなどでは、持ち込める器具に制限がある場合があります。「ビート板」や「プルブイ」などの基本的な器具は許可されているところが多いですが「フィン」や「ウォッチ」などは禁止している場合もあるので、トラブルにならないように事前に確認してから使用するようにしましょう。
注意点3:やりすぎると逆にフォームが崩れる
フィンは推進力を大きくして正しい姿勢を意識するのに有効な器具です。しかし、使いすぎるとフィンをつけていない推進力になれず、体のバランスを崩してしまうことにもなりかねません。フィンを使ってトレーニングする場合には、「普段の推進力でフォームを改善する」ということを意識して、多用しすぎないようにしましょう。
楽しくて、ついついフィントレーニングは長くなりがちですが、フォームが崩れたりケガしてしまったりするので、ほどほどにしておきましょう。
まとめ
けのびの重要性、間違ったけのびによる危険性は理解いただけましたでしょうか?
正しいけのびができると、壁を蹴るのもターンも楽しくなり、さらにタイムもどんどん上がっていくので、「水泳を好きになる可能性120%」です。
今度プールに行くことがあれば、「間違ったけのび」を探してみてください。
残念ながら、すぐに見つかるはずです。。。。みなさんがそうならないように、願っています!
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